2026年10月21日、OpenAIは、数千のAIエージェントがマウスの脳細胞数百万個に対する介入データを32分で分析した研究を紹介した。チームは、ひとつの長いプロンプトに頼るのではなく、作業をエージェントに分担させた。それぞれが個別の遺伝子介入を調べ、細胞の変化を論文と照合し、考えられる説明を提示した。成果は、遺伝子、細胞への影響、科学文献を結びつけた公開カタログとなった。

このプロジェクトにはOpenAI、PerturbAI、Scripps Researchが参加した。研究の説明と論文のプレプリントは、エージェント型システムの実用例を示している。広範な実験結果を並行して調べ、見つかった関連性を、研究室で検証するための問いに変えるというものだ。研究グループが、分野の異なる文献との照合に手作業で追いつけないほどデータが蓄積している場面で、とりわけ役立つ可能性がある。
分析をどのように分担したか
GPT-Rosalindエージェントは、個々の遺伝子の機能を阻害したときに、さまざまな細胞種にどのような影響が及ぶかを示す全脳アトラスを分析した。各エージェントは担当する介入を調べ、細胞の応答を分析し、関連する科学論文を探して仮説をまとめた。その後、個別の報告を統合し、観察結果を考えられるメカニズムや情報源と結びつけた「reasoning atlas(推論アトラス)」にまとめた。
研究チームの推定では、同等の分析を一度にひとつの介入について手作業で行うと、数か月から1年かかるという。この比較は、説明された作業量とチームの見積もりに基づく。エージェントが再分析したのはすでに収集されたデータであり、新たな生物学実験を実施したわけではない。得られた仮説は、どの観察結果をさらに検証する価値があるかを判断する助けとなる。
なぜ数千のエージェントを使ったのか
OpenAIは、モデルと利用可能なリソースを同じにしたうえで、分散型の手法と単一エージェントを比較した。タスクの規模を最大にしたシナリオでは、単一エージェントが参照した情報源は11件だったのに対し、分散システムでは700件を超えた。専門家によるブラインド比較では、75%のケースで、単一エージェントの報告よりも分散エージェントの報告が選ばれた。
これらの数値は、この特定の実験と専門家の評価に関するものだ。研究チームにとっての実務上の示唆は、分析速度だけでなく、情報源の網羅性、参照の質、そして結果が検証可能な明確な仮説につながるかどうかも確認することにある。
意外な関連性から次の実験へ
一例は、変異がペリー症候群を引き起こす遺伝子DCTN1に関するものだ。ペリー症候群は、パーキンソン病に似た症状を伴う神経変性疾患である。アトラスのデータでは、Dctn1を阻害すると、コレステロール合成に関係する遺伝子の活性が高まっていた。コレステロール輸送に関する論文とこの観察結果を照合したエージェントは、DCTN1の機能障害がニューロン内のコレステロール分布を変え、その損傷に影響する可能性はあるか、という問いを立てた。
別の仮説は、Tsc1とTsc2を比較したときに生まれた。どちらの遺伝子もmTORの調節に関わるが、小脳の特定の細胞では、Tsc2の機能を阻害すると神経伝達に関係する数十の遺伝子の活性が変化した一方、チームが観察したTsc1の影響は、その領域でははるかに小さかった。こうした結果は、探索範囲を絞るのに役立つ。研究者は、その後の実験室での検証に向けて、対象となる細胞やメカニズムを選べる。
公開されたreasoning atlasのカタログを使えば、研究者は関連性を調べ、次の研究テーマを選ぶことができる。このプロジェクトの主な実用価値は、初期調査を大規模に行える点にある。システムは膨大な実験データを文献とすばやく結びつけ、検証すべきアイデアを提示する。研究者はそれをもとに、どの仮説を実験室で検証するか判断できる。